サイバースティックでアフターバーナーを遊びたい(1)
接触編



アフターバーナーを遊びたい?なるほど…
どのアフターバーナー?


概要
mbedマイコンボードによる、各種TVゲーム機向けジョイスティック互換デバイスの作成


序文 琥珀色の男の夢
ある日、会社帰りに秋葉原の中古ゲームショップをブラブラしていたところ、それを見つけてしまいました。

サイバースティック(中古)4,000円

うおおおお!!サイバースティック?!
しかも数千円なんて、嘘だろう・・・

80〜90年代にマイコン少年だった者にとって、サイバースティックは憧れ、まさに夢のデバイスと言えます。定価25,000円くらいだったと思いますが、同じく夢のパソコンである『X68000』用の周辺機器で、子供には手を出せない高級品でした。
雑誌『マイコンBASICマガジン』(懐かしい!)などの広告や紹介記事、テレビ番組『パソコンサンデー』(もっと懐かしい!!)にX68000と一緒に写っているのを見るたび、
「ああ…サイバースティック、かっこいいなあ…」
と思ったり、
「これでアフターバーナーを遊んでみたいな」
と夢みていたものでした。

そんな夢のデバイスが今、目の前にある!
帰りの電車内で持ち運びに困ることは考えず、即購入し、帰途に着いたのでした。

買ったはいいのですが、残念ながら手持ちの機器で、サイバースティックを接続してアフターバーナーを遊べるものはありませんでした。
そのため、たまに箱から出しては机の上におき、操縦桿とスロットルを握り、

「うーん、この重量感、握ったときのシックリ感、手を離すと中立に戻るバネの利き具合…さすが夢のサイバースティックよな…」
「ドドド!ドドド!(機関砲の音)ファイア! ファイア!」

などと、ハードウェアフェチ的・イメージトレーニング的なアプローチで楽しんでいました。
(だまされたと思ってやってみてください。結構楽しいですよ!)

しかし、いい歳をした人間がいつまでも脳内アフターバーナーで遊んでいてもしょうがないと思うようになりました。
なんとか、これでアフターバーナーを遊べないものか…
というわけで、サイバースティックでアフターバーナーを遊ぶ方法を調べ始めたのでした。


カブトガニはアフターバーナー互換じゃなかったの?
アフターバーナーを実行するプラットフォームとしては、メガドライブを選んでみました。

このメガドライブ版「アフターバーナーII」は、発売当初からアナログスティック対応をうたっており、 マニュアルに「新発売のアナログスティックでより一層楽しめるぞ!!」旨の宣伝が載っていた、気がします。
そういや発売日に、メガドライブ本体と一緒に、池袋のビックカメラで買ったんだっけ…帰りには自転車の荷台にメガドライブをくくりつけて。懐かしい…

さて、メガドライブ向けのアナログスティックとは、残念ながらサイバースティックのことではありませんでした。
いかにも「人間工学に準じてます!!」的なデザインの「XE-1AP」、通称「カブトガニ」と呼ばれたアナログジョイスティックのことだったのです。


図:カブトガニ(左)とXE-1AP(右)
似ているので間違えないように要注意だ

メガドライブのジョイスティック端子とサイバースティックの出力端子は、どちらもD-SUB9ピンコネクタの形状をしており、外見からはそのまま接続できそうに見えます。が、コネクタ内部のピンの配列が異なり、電気的にそのまま接続できないのです(サイバースティックはATARI互換形式、メガドライブはセガ形式)。
後発のカブトガニは、「PERSONAL COMPUTER/MDモード切り替えスイッチ」を持っており、この違いを吸収していました。

メガドライブにはカブトガニは接続できるが、サイバースティックは接続できない… しかし昔、何かで「カブトガニは、サイバースティックの互換品である」という話を見たことがありました。 ひょっとしたら、コネクタのピンの入れ替えだけでサイバースティックも容易に接続できるのでは?と思い、試してみました。

ATARI互換端子とセガ端子の違いは、「チェルノブアダプタ」というものにより吸収できます。
これは、X68000のゲーム「チェルノブ」をメガドライブのジョイパッドで遊ぶための変換アダプタで、セガジョイスティック->ATARI互換ジョイスティックポートへの変換を行うものです。
サイバースティックをメガドライブにつなぐには、この逆の変換、ATARI互換ジョイスティック->セガジョイスティックポートへの変換を行えば良いわけです。


表:ATARI互換端子とセガ端子の違い

そこでこの「逆チェルノブ変換」を行うアダプタを作り、サイバースティックをメガドライブに接続してみました。
おお!ゲーム画面の下に「ANALOG」の文字が出た!!(アフターバーナーがアナログジョイスティックを認識したことを示す表示)
が、なんか…ボタンアサインやスティック割り当てがぜんぜん違う…

結論から言うと、カブトガニ(MDモード)とサイバースティックは、データ伝達形式は互換ですが、それで伝達されるデータの中身が入れ替えられていたのでした。


表:サイバースティックをメガドライブに強引に接続した際の、データ入れ替わりの様子
AボタンはE1ボタンとして認識され、スティックを押す操作はスティック左操作になる。

逆チェルノブ変換、敗れたり…困りました。

対応するには、サイバースティックを改造(ボタンや、スティック/スロットルの半固定抵抗の基板への配線を入れ替えてしまう)すれば行けそうです。 が、相手は命より大事(?)なサイバースティックです。おいそれと改造はできません。
それに…ひょっとしたらある日、X68000がゴミ捨て場にそのまま落ちてるのを拾えちゃうかもしれないじゃないですか!その日に備えて、サイバースティックは素のままで置いておきたいところです。

そうなると、残る手段は「サイバースティックからのデータを読み取り、カブトガニ形式にデータを変換後、カブトガニっぽくメガドライブに送信する」という、ある意味、偽物のカブトガニを作る方法しかありません。
アナログスティックを作る、ねえ…
傍らを見ると、組み込み開発の勉強用にと、秋月電子で買ったマイコンボード「mbed」がありました。
Lチカ(LEDをチカチカ点滅させること)など、いくつかのプログラムを作って動作させており、 結構開発のしやすい環境だという印象を持っていました。

いっちょう作ってみるか!偽物のカブトガニを!

「ニセカブトの製作」へ続く

(2013/07/27)



トップへ戻る